「20代の4割が田舎移住希望」「すごい!」と思ったけど調査結果をちゃんと読んだらだいぶ印象が違った

内閣府の調査で、田舎に移住したいと思っている若者が増えている、というこの記事。

田舎への定住希望が急増、20歳代で4割近くに

(前略)

都市部の住民では、田舎への定住を希望する人が31・6%で、前回2005年調査より11ポイント増加。年齢別では20歳代が38・7%で最も多かった。

(後略)

(YOMIURI ONLINEより ※リンク先の記事は削除済み)

さてこの見出しと文章を読んで、素直にどんな印象を持ちますか?

「おー、若い人がそんなに田舎に住みたがってるのか。20代のうちの4割近くってめっちゃ多いじゃん。若いパワー持った人がいっぱい田舎行ったら面白くなりそう!じゃあこれからは、そういう人を受け入れるための施策が田舎に求められるんだな。」

なんとなくこんな感じかと。でもなーんか引っかかる。だからもう少しちゃんとデータを見たいなと思って、文中にあるそのままのタイトルでググったら内閣府のサイトが見つかった。

ざっと見てみた。あれ、なんだかちょっと…うむむ。これはちゃんと読まないと認識間違うし議論のポイントがずれそうだ、ということでブログに書くことにした。

※調査結果の目次ページに「本報告書の内容を引用されたときは,その掲載部分の写しを下記宛に御送付下さい。」と完全に時代錯誤な断り書きがあり、そんな面倒なことはやってられないので、調査結果を見ての「感想」です。せっかく調査結果のグラフやCSVのデータもあるから、簡単に使わせてもらえるともう少しわかりやすくなるんだけど。。

 

「20歳代で4割近く」 と言い切るのは難しそうだった

まずはやっぱり「20歳代で4割近く」という部分をちゃんと確認したい。ということでサイトにある『都市住民の農山漁村地域への定住願望の有無』の表を見てみる。

パッと見て思ったのは、「20代の回答者数、少なっ」。もちろん内閣府がやっている世論調査だから、色んな情報を基に統計上で有効になる人数を割り出してるんだろうけど、全国への調査で20〜29歳の回答者数が75人ってどうなの。

ここまで少ないと、標本誤差を考慮しなきゃいけないはず。ちょうどサイトに『世論調査結果を読む際の注意』というページがあるので、こちらの表を引用。

atten-1 (世論調査結果を読む際の注意より)

この表で照らし合わせると、20〜29歳の回答者数Nは「75」、かつ回答比率が「38.7%」なので、想定される誤差は「± 9.6%」となる。よって、田舎への定住を希望すると回答した20代の人の割合は「38.7%±9.6%」なので、「29.1%〜48.3%」の間になる。

つまりまとめると、

調査上の誤差を考慮すると、YOMIURI ONLINEの見出しの「20歳代で4割近くに」というのは、「3割近く」かもしれないし「5割近く」かもしれない。そんな精度の調査だった。

 

「いつ田舎行くの?」「今…じゃないでしょ」だった

いやいや、それでも最低でも20代の3割は田舎に移住したいって考えてるってすごいじゃん、と言われたらその通り。だけど大事なのは、その人たちはいつ田舎に行くの?ということじゃないかと。

サイトの『農山漁村地域への定住実現の時期』の表によると、田舎への移住願望が「ある」もしくは「どちらかというとある」と答えた人のうち「すぐにでもしたい」のが3.4%、「5年以内にしたい」のが6.9%。それ以降は20代のうちの移住願望はあまりないと読める。

ここでよく見ると、そもそも20代の移住希望者が29人しかいない。ってことは、29人×3.4%=1人だし、29人×6.9%=2人なので…え、3人だけしかいないの!?

つまりまとめると、

20代の回答者:75人

20代で田舎への移住願望のある人:29人

20代のうちに田舎への移住願望のある人:3人

つまり割合で言うと、20代のうちに田舎への移住願望のある人は4%
(標本誤差を踏まえて多く見積もっても10%未満?)

となる。

 

さてこれらを踏まえて…

冒頭の『田舎への定住希望が急増、20歳代で4割近くに』の記事を最初に読んだときの印象と比べてみると、どうでしょうか?

YOMIURI ONLINEに悪意はないだろうし書かれたことも正しいけど、個人的には調査結果をちゃんと見た後だと最初の印象と違いすぎてなんかもやもやする。明らかなウソや釣りタイトルだったら大っぴらに非難できるのに、間違ったことを言ってるわけじゃないから、余計にね。

と、ここでこうやって書いてるのもまた別の印象を与えてしまっている可能性もあるわけで、あー難しい!変な誤解を生んでいないことを祈ります!

ネタ全般