ササダンゴマシンが完璧なプレゼンをして必殺技『リーマンショック』を3回決めたのに負けた理由が深い
完璧過ぎるプレゼンテーションと大絶賛されて話題になった、DDTプロレスのスーパーササダンゴマシン選手の「煽りパワポ」。
いちプロレスファンとして、まさかDDTやササダンゴマシンがこんなに話題になるなんてとても嬉しい。感慨深くてジーンとしてしまう。でもだからこそ、これを入口としてちょっと補足して語らせてほしい。
ササダンゴマシンの異色さはこんなもんじゃない
プロレスラーっぽくないと言われているササダンゴマシン。でもそもそもその中の人は、早稲田大学第二文学部を7年生で中退していたり、実家の金型工場『坂井精機』の専務取締役だったり、現在も新潟大学大学院の技術経営研究科に在学中だったり、プロレスラーとして異色過ぎる経歴を持つ人。
そしてそれ故に(?)アイディアマンでもあり、おととしの日本武道館大会では、実家の新潟から試合会場の武道館に向けて黄色いTシャツを着てマラソンをしている様子が、リングの後ろにあるスクリーンで中継され、試合の真っ最中に「サライ」の替え歌で「サカイ(=中の人の名前)」を歌いながら登場した。
うん、意味が全然わかんないと思う。説明しているこっちも何言ってるのかよくわかんないけど、ほんとなんだ。
(DDTプロレス公式サイトより)
あと、試合中に葉加瀬太郎の「情熱大陸のエンディングテーマ」が流れると、なぜか試合展開がスローモーションに見える試合をやっていたりもする。
だからあんなプレゼンをできるのは当然…とまでは言わないけど、ただのキワモノレスラーが思いつきでやったわけじゃないのだ。
本当に言いたいことはプレゼンの後の試合にあった
そんなササダンゴマシンによって行われたプレゼンは完璧だった。納得させた。笑いも取った。そして狙い通り、必殺技『リーマンショック』を3回決めた。
(DDTプロレス公式サイトより)
プレゼンで発表した通り、3回成功で相手の体力は−105%。必ず勝てるはず。
なのに、負けた。ここで「あんなプレゼンしといて負けたのかよwwwササダンゴマシン弱っwww」と終わらせるのは簡単だ。でもそれは本質じゃない。
勝利したチャンピオンのHARASHIMA選手は、試合後のリング上でササダンゴマシンにこう語りかけた。
おい、サ……サ……坂井クン、やっぱり面白いよ。さっきのプレゼン見たときは3発食らったらヤバイと思ったけど、僕は3発食らっても返せました。キミは大事なことを忘れているよ。計算じゃ出ないことを。みんなの応援があって一気に8割まで回復したんだよ。最後の応援で9割まで回復したんだよ!そういう計算じゃ出せない部分、プロレスではあるんだよ。
(DDTプロレス公式サイトより)
そう、あの完璧なプレゼンは「振り」で、ここまでがワンセットなのだ。どれだけロジカルに理屈を積み上げても、どれだけ実験を重ねて結果に基づく計算をしても、それらを超え、跳ね返すのがプロレスということなのだ。
そしてバックステージでのササダンゴマシンのコメントも、深い。
――プラン通りにはいかなかったですね。
ササダンゴ いかないですねぇ。逆に言えば製造業界はリーマンショックから未だに回復できないで、苦境に立たされてますけどよく考えてみたらDDTはリーマンショックのあった2009年から急激に成長している会社で(笑)、HARASHIMAさんというのはその象徴的な選手なんですよね。
僕も金型工場の専務をやってますけど、外部環境を分析するとやっぱり日本の製造業はダメなんじゃないかと思いがちなんですけど、そうじゃなくてそれでもリーマンショックが3回起きてもキックアウトできる気持ちみたいなものをHARASHIMA先輩から教えてもらったというのが、僕は今日負けてしまいましたけど、明日からまだまだ金型の仕事を新潟で頑張れるんじゃないかなと、そういう気持ちになれたんですよね…なんのコメントですか(笑)。(DDTプロレス公式サイトより)
一見おふざけで付けられたかのような『リーマンショック』という必殺技の名称が、ここで本当に大きな意味を持ってくる。
色んな分析をして導き出された理屈があった。でもそんな理屈は、跳ね返された。だから今の逆境が辛くても、跳ね返せるかもしれない。この試合がそうであったように!…そんなメッセージを含んだ試合だったのだ。そしてこれは、日本の製造業に限らずとも、逆境に立ち向かう全ての人に投げかけられているように思う。
ササダンゴマシンのプレゼンが素晴らしかったからこそ刺さる、このメッセージ。改めて感じる、プロレスの凄さと奥深さと可能性。プロレスっていいね。DDTっていいね。ササダンゴマシン、ありがとう!
※追記:ササダンゴマシンご本人にも読まれたよ!
ありがとうございます。仕事をやりながらプロレスを頑張ってる人なんて実はたくさんいて、みんな少なからずこんな気持ちでやってるんです。>RT
— スーパー・ササダンゴ・マシン (@abulasumasi) August 2, 2014